生成AIを活用したコンテンツ/著作権の取り扱いについて

2024.09.17

こんにちは株式会社リプリーのリプ美です。

今回は生成AIコンテンツを安全に活用するためのポイントや、著作権に関する情報をご紹介していきます。

みなさんは2024年8月17日にマクドナルドの広告プロモーションが話題を呼んだ件についてご存知でしょうか?今回は主にマクドナルドの一連の内容を基に、その理由や考察について深掘りしていきます。

マクドナルドの広告が話題になった件について

内容:2024年8月17日、マクドナルドはマックフライポテトの値引きキャンペーンを告知するプロモーションビデオをX(旧Twitter)で公開しました。この動画は生成AIを活用して制作されたものでしたが、公開直後から「不気味」「食欲をそそらない」といった声が殺到し話題となりました。

なぜこの広告はこれほどまでに批判されたのでしょうか。主な理由は以下の点が挙げられます。

  1. AIが生成したコンテンツまたはロボットの動きなど、人間に近づくにつれて不気味さを感じさせる「不気味の谷現象」に陥っていた可能性がある。特に表情や動きがぎこちない点などが違和感を与えたと考えられる。
  2. 実写と比較してAIはリアリティに欠けるため、食欲をそそるような「本物感」が不足していたと考えられる。
  3. どこか人工的で温もりのない単発的なシーンをつなぎ合わせた動画に視聴者が拒否感を抱いてしまった可能性がある。
  4. AIが生成したコンテンツに対する不信感や、AIに仕事が奪われるのではないかという不安も炎上の一因となった可能性がある。

今回は主に1と2に関する意見が目立つものと思われます。

生成AIの現状と課題

AIは画像生成や動画編集など日々急速に進化を遂げています。しかし今回の事例が示すように、まだ人間の創造性を完全に代替できるわけではありません。生成AIコンテンツを使用する際の注意点や現状の課題を以下に記しました。

  • AIはデータに基づいてパターンを学習し新しいコンテンツを生成するが、人間の持つ創造性や感情表現を完全に再現することはまだまだ難しい。
  • AIが生成したコンテンツが著作権侵害やプライバシー侵害につながる可能性がある。またAIによるフェイク動画や画像の拡散も大きな問題となっていることから、倫理的な側面を常に意識する必要がある。
  • 今後のAIを起用した広告は、単に商品を宣伝するだけでなく消費者と共創することでより消費者の興味や関心に合わせて商品を宣伝し、そして共感を得られるコンテンツを提供していくことが求められる。

批判を受けなかった事例

生成AIコンテンツを起用した広告が必ずしも批判されるわけではありません。

以下に生成AIを起用した広告を公開するも、否定的な意見が少なかった企業をまとめました。

  • 伊藤園「お~いお茶 カテキン緑茶」(テレビCM)
  • 大日本除虫菊「キンチョール「ヤング向け映像」篇」(テレビCM)
  • シャープ「AQUOS」(テレビCM)
  • マッチングアプリ「オタ恋」(インターネット広告)

伊藤園やシャープはテレビCMとして放映されるだけあって、普通に見ていても実写と区別できないくらいクオリティが高く、まるで実写のように自然に表現することで視聴者の心を掴んでいます。一方「オタ恋」の広告まったく逆で、一見して不自然な印象を受けるのだが意図的に非現実的な人物の表現を用いることで、新たな表現の可能性を示唆する事例も存在します。

同じAIを起用した広告でも、より人物像に近い【クオリティを担保したコンテンツ】は否定的な意見を避けられる傾向にあると考えられます。

企業はAI技術を適切に活用することで、より効果的なマーケティング活動を行うことができると言えます。しかしその一方で社会全体への影響をしっかりと見極める必要があります。

生成AIコンテンツの著作権の取り扱い/現時点の見解

マクドナルドの最新広告が公開された際、Xでは「生成AIはネット上の無数のデータを取り込んで学習していることから、パクリ・盗作なのではないか」という声が多く見られました。この声は、AIが学習に用いるデータの著作権や生成されたコンテンツの著作権といった極めて重要な問題点を示しています。そこで生成AIコンテンツの著作権について、現段階での弁護士の見解をまとめてみました。

生成AIによって作られたコンテンツの著作権は?法律上の論点を解説

以下リンク参照

生成AIによるコンテンツの知的財産権の取り扱いと法的整理

生成AIを利用して制作されたコンテンツ(以下「生成コンテンツ」)については、著作権に関する論点整理が有識者の間で進められています。生成コンテンツに関する著作権法上の問題は、以下の2つに大別されます。

・生成コンテンツには著作権が認められるのか

・生成コンテンツが他人の著作物と似ている場合、著作権侵害は成立するか

今回は〈生成コンテンツが他人の著作物と似ている場合、著作権侵害は成立するか〉についてご紹介します。

2.生成コンテンツが他人の著作物と似ている場合、著作権侵害は成立するか

この問題について、以下の二段階に分けて論点整理が行われています。

  1. 開発・学習段階 大量のコンテンツデータを機械学習する段階
  2. 生成・利用段階 学習済みの生成AIを用いて新たなコンテンツを生成し、公表する段階

開発・学習段階における既存著作物の利用については、2019年1月1日に施行された改正著作権法によって立法的な解決が図られました。

同改正法によって新設された著作権法30条の4では、著作物に表現された思想または感情を自ら享受し、または他人に享受させることを目的としない場合は、著作権者の利益を不当に害しない限り、著作権者の許諾なく利用できるものと定められています。

生成AIによる機械学習は通常、それ自体が人間による著作物の「享受」を目的とするものではないため、原則として著作権者の許諾を要しないと考えられます。ただし、有償での利用が一般化しているコンテンツデータについては、無許諾での利用が著作権者の利益を不当に害し得るため、生成AIの開発・学習目的であっても著作権者の許諾を得なければなりません。

生成・利用段階における既存著作物の利用については、「類似性」と「依拠性」の2つの要件をいずれも満たす場合に限って著作権侵害が成立します。基本的には、類似性が認められれば依拠性も認められるケースが多いと考えられます。

類似性:既存著作物と新著作物が同一であり、または類似している場合には類似性が認められます。類似性の有無は、既存著作物の表現の本質的な特徴を、新著作物から直接感得できるかどうかによって判断されます。

依拠性:新著作物が既存著作物に依拠して生み出された場合には依拠性が認められます。生成コンテンツに関する依拠性の有無の判断基準については見解が分かれており、一例として以下のような見解が存在します。

  • 機械学習させたコンテンツについては、一律で依拠性を認めるべき
  • 機械学習させたコンテンツのうち、生成コンテンツと類似しているものについては依拠性を推定すべき

などが挙げられます。生成AIは実際に広く活用されるに至ってからまだ期間が短いため、実際に著作権侵害などが争われた事案は現時点で少数です。しかし今後ますます生成AIの利用が普及すれば、それに伴って生成コンテンツに関する紛争事案も増えることが想定されます。

国内では文化庁・学者・弁護士などを中心に、生成コンテンツに関する論点整理は引き続き進められています。しかし、実務における生成コンテンツと知的財産権の取り扱いが確立するまでには、十分な裁判例の集積を待つか、または法改正などによる立法的解決が必要になるでしょう。(2024年3月24日)

以上、弁護士の見解をまとめてみました。

現段階での著作権法では、生成AIの学習過程における著作物の利用については一定の条件下で許容される一方で生成されたコンテンツの著作権についてはまだ明確な規定が整っていません。今後生成AIの技術がますます発展するにつれて、著作権法のさらなる改正が求められるでしょう。

今回は生成AIコンテンツを安全に活用するためのポイントや、著作権に関する情報をご紹介しました。

今回ご紹介したように、生成AIの活用には技術的な側面だけでなく、法的・倫理的な側面も考慮する必要があります。弊社運営サービスanother earthでは、著作権・肖像権などあらゆる権利の侵害を回避する取り組みを行った上で提供しています。生成AIに関するご質問やご相談がございましたらお気軽にお問い合わせください。

今後も生成AIに関する新たな情報や動向がございましたら、本コラムでより詳細な情報をご紹介していきます。

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